【平松昭良】光で食卓を演出する夜ごはん|デザイナーとして工夫している事

こんにちは、平松昭良です。東京・表参道で家具製造会社のインテリアデザイナーとして働きながら、料理をデザインの視点から書いています。今回のテーマは光です。インテリアの仕事をしていると、空間の印象を決める最大の要素は、家具でも色でもなく、実は照明だと感じる場面が何度もあります。同じ部屋でも、光の当て方ひとつで居心地はがらりと変わります。そしてこのことは、食卓の上でもまったく同じように起こるのです。

光が変えるのは、味の感じ方

以前、自己紹介で、同じ料理でも心地よい光のもとでいただくと味わいまで変わって感じられると書きました。これは決して気のせいではありません。人は食べ物を味覚だけで判断しているわけではなく、視覚から受け取る情報に大きく左右されています。料理がどんな光に照らされているかは、おいしさの体験そのものを静かに方向づけているのです。

明るすぎる白い光のもとでは、料理の影が消え、平面的でそっけない印象になりがちです。一方、少し落とした暖かな光のもとでは、料理に陰影が生まれ、湯気や照りが立体的に浮かび上がります。レストランの照明がどこか落ち着いていて、料理がおいしそうに見えるのには、ちゃんとした理由があるのです。家庭の食卓でも、この光の効果は十分に取り入れることができます。

色温度と、光の落とし方

照明設計で大切にしている考え方のひとつに、色温度があります。色温度とは光の色みのことで、数値が高いほど青白く、低いほど赤みのある暖かな光になります。昼間の活動的な空間には青白い光が向きますが、食卓やくつろぎの時間には、低めの色温度のあたたかな光がよく合います。夕食のときは天井の白い照明を少し落とし、暖色の明かりに切り替えるだけで、食卓の空気は驚くほど変わります。

もうひとつ意識したいのが、光をどこから当てるかという落とし方です。空間設計では、すべてを均一に照らすのではなく、見せたい場所にだけ光を集めることで、奥行きと陰影をつくります。食卓でも同じで、テーブルの真上から料理にやわらかく光が落ちるようにすると、料理が舞台の上の主役のように引き立ちます。部屋全体を煌々と照らすのではなく、食卓だけを照らす。その引き算が、特別感のある夜をつくってくれます。

間接照明で楽しむ、簡単アヒージョ

光を主役にした夜にふさわしい一皿として、今回はアヒージョを紹介します。卓上で小さな鍋がふつふつと音を立て、オイルの照りが揺れる明かりに映える、まさに光と相性の良い料理です。材料は二人分で、お好みの具材を適量。今回はえびとマッシュルーム、ミニトマトを使いました。これににんにくをふた片、オリーブオイルを具材がひたるくらい、鷹の爪を一本、塩を少々用意します。

作り方はとても簡単です。にんにくはみじん切りにし、小さめの鍋かスキレットにオリーブオイルとともに入れ、弱火でゆっくり熱します。にんにくの香りが立ってきたら、種を取った鷹の爪と塩を加えます。ここで焦らず弱火を保つのが、にんにくを焦がさずに香りを引き出すこつです。香りの土台ができたら、えびとマッシュルーム、ミニトマトを加え、弱火のまま五分ほど煮るだけで完成します。

仕上げの楽しみは、ここからです。部屋の天井照明を落とし、食卓のそばに小さな間接照明やキャンドルのような明かりを灯してみてください。揺れる光のなかで、オイルの照りと立ちのぼる湯気が美しく浮かび上がります。同じアヒージョでも、明るい蛍光灯の下で食べるのとは、まるで別の料理のように感じられるはずです。残ったオイルにパンを浸せば、最後の一滴まで余すことなく味わえます。

暗さを、ごちそうにする

明るいことが必ずしも良いわけではありません。空間にとっても食卓にとっても、適度な暗さはくつろぎと豊かさをもたらしてくれます。すべてを照らし出すのではなく、あえて影を残すこと。その引き算が、料理にも時間にも特別な奥行きを与えてくれます。照明を少し落とすだけで、いつもの夕食が、ささやかなごちそうの時間に変わるのです。

特別な道具も難しい技術もいりません。今夜、食卓の明かりをほんの少し落としてみてください。それだけで、料理がいっそう魅力的に見え、会話もどこかゆっくりと流れていくはずです。次回はいよいよ最終回、十年の仕事を通して考えてきた機能美について、常備菜とともに書いてみようと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

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